会社では経理事務を担当しているAさん(男性)。
平日は昼夜を問わず、座ったまま長時間パソコン作業に精を出している。
仕事中には原因不明の手足のむずむず感に悩まされ、じっとしていることさえ耐えがたい日もあるという。
しかも、激しい頭痛や首の痛み、吐き気に見舞われる事もしばしばで、病院ではうつ病の治療も受けている。
Aさんはどことなく表情が暗く、身体から精気が抜けてしまっているかのような印象である。
早速、うつぶせになってもらい身体観察をしてみると、Aさんの首や肩の周りには岩のようなゴリゴリした筋肉のかたまりが、いくつもある。
無理な姿勢で長時間パソコン作業を続けたせいであろうと容易に察しがつく。
細い鍼を丁寧に刺していくと、岩のようだった筋肉のかたまりが、つきたてのモチのように柔らかくゆるんでくる。
「あ~とっても気持ちがいい」と連呼するAさんは、今にも施術ベッドで眠りこんでしまいそうである。
速効性のあるところが鍼治療の醍醐味なのだと改めて実感する。
数分間、鍼を刺したまま安静にしてもらっていると、いつのまにかイビキをかいて眠っていた。
まぶたの重そうなAさんに声をかけ、からだを起こしてもらう。
すると首肩の痛みはほとんどなく、首を回したり肩を上下に動かしてもらうと先ほどよりだいぶ軽くなっているという。
安堵感からか、少し笑顔もみられる。続いて仰向けに寝てもらい、今度は手足のむずむず感に対処しようと左右の肘から手首にかけて観察してみる。
医師によると、検査では特に異常所見はなく、有効な治療法はないとサジを投げられているそうだ。
しかしAさんの両腕には空気がパンパンに張り詰めたような箇所があった。
そして両膝から下にも同様の症状が出ている。
東洋医学的に気の滞りと判断、局所に鍼をして様子を見てみる。
すると、手足のむずむず感が少しずつ緩和されていく感覚があるという。
現在Aさんは週一回の治療を続けているが日常生活ではほとんど気にならないレベルにまでなった。
あまりにつらくて鉛筆のとがった芯を局所に突き刺したこともあるそうだが今は昔の話である。
